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リバネス・レジリエンス・プロジェクトでは7月24日に、参画するベンチャー企業、パートナー企業、石川県とともに、石川県珠洲市の真浦地区を訪問しました。この地区には、震災前からディープテックを活用した自立分散型社会インフラの検討等、先進的な活動を行っている現代集落の本拠地があり、本プロジェクトでは現代集落の協力のもと技術実証を検討しています。ツアー当日は現場を見て回り、エネルギー、水・トイレ、データ活用等のテーマに分かれ、現地の課題の解決のためにベンチャーのプロダクトで何ができるか、実証に向けてのディスカッションを行いました。
震災後7ヶ月間断水中の能登真浦地区で、老朽化インフラから脱却したくらしを構想
真浦地区は能登半島の先端にあるいわゆる限界集落。震災前は20世帯ほどがくらしていましたが、震災後半年以上経っても水道インフラは修復されず断水が続いていることもあり、ほとんどの世帯は今もなお集落外での避難生活を送っています。一方、震災前からこの地区で活動をしていた現代集落の代表林さんは、真浦での生活が少しでも早く戻るように、最新のテクノロジーを活用しながらエネルギーや水が循環し、快適な生活ができる持続可能な集落に変えていくことを目指して、全国から有志を募って活動を継続しています。真浦地区の住民の理解と納得を得ながら、対話を通して新たなくらしの実証をしようとしています。最初の3年間で3世帯程度を自立・循環型のモデルケースとし、6年後までに真浦地区全体を自然と共生した持続可能な地域に、9年後には現代集落のモデルを能登半島全体に広げるという未来像を描いています。
住民とベンチャー、大手中堅企業、自治体、リバネスが現地でチームとなる。
現代集落の代表林氏が、真浦に個人で購入したテクノロジーの実証地は、真浦の港から山に続く曲がりくねった道に沿って点在しています。段々畑やため池、湧水、古民家などがあり、ほぼ手つかずの状態で残されています。ここに最新のテクノロジーを導入し、電力・水道インフラから独立した、完全オフグリッドの生活ができる施設を建築する計画を話し合いました。課題となるのがやはり、導入コストやランニングコスト、そして対象とする世帯数とビジネスモデルです。誰が費用を負担し、誰がメンテナンスをするのか。また、真浦以外の地区にどう広めていくのか、関係人口をいかに増やしていくかなど、忖度抜きの議論を行いました。全員が、このプロジェクトは10年がかりであることを再認識し、ここから住民、技術を持つベンチャー、それをサポートする企業、そして自治体が一体となって、実証に向けて議論を続けていくことを約束し合いました。
参加者の声
・住民の立場からすると、技術の実証は良いが実証のやりっぱなし、設備の放置だけは絶対にしないでほしい。
・今後、この集落には人がどれだけ戻ってくるのだろうか。1つ1つのプロダクトやプロジェクトがすばらしくとも、人がいなくてはビジネスは成り立たない。
・持続可能にするためには、コミュニティーの形成や、Z世代の価値観も考慮しながら、長期的に議論していきたい。
・いかに人を呼び込むかについては、大都市からの移動距離に応じて、アプローチを変える必要がある。移動にかかるカーボンオフセットの仕組みを作ってテストしてみるのも面白い。教育活動とからめることも有効だろう。
・現地のニーズを捉えて、複数の技術をパッケージ化することが必要だ。今のチームに足りないピースを補う必要がある。
真浦地区におけるディープテック活用イメージ〜議論の内容を1枚の絵で表現〜
ツアー参加者の所属
ディープテックベンチャー
・WOTA 株式会社:小規模分散型水循環システム
・株式会社 e6s:トイレ洗浄水循環システム
・環境微生物研究所株式会社:農作物残さからメタンガスと電気と肥料を生産する装置
・株式会社チャレナジー:過酷な環境でも発電できるタフな風力発電機
・株式会社テラ・ラボ:長距離無人航空機による広域災害システム
・株式会社 Ridge-i:AI 技術と衛星データを用いた画像解析
・株式会社 Liberaware:狭小空間点検ドローン
パートナー企業他
・アクアクララ株式会社
・篠田株式会社
・石川県
・株式会社リバネス
・キヤノンマーケティングジャパン株式会社
・東日本旅客鉄道株式会社
・現代集落
今回、参加者数は総勢29名となりました。大勢の訪問者をうけいれてくださり、視察と議論にご協力いただきました現代集落のみなさまに、心より御礼申し上げます。
なお、リバネス・レジリエンス・プロジェクトでは、8月31日(土)超異分野学会大阪・関西大会のパネルセッションを実施、本プロジェクトから現代集落の林さん、石川県の佐藤さんにご登壇いただきます。本プロジェクトにご興味のある方は、ふるってご参加ください。