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【参画ベンチャー紹介】株式会社Liberaware 〜小型ドローンによる狭小空間点検〜

株式会社Liberaware(以下、Liberaware)は、商業施設や交通設備、プラントなどの社会インフラにひそむ様々なリスクに対し、独自開発の小型ドローンを用いることで、事故や災害を未然に防ぎ、誰もが安全な社会を作ることを目指している。2023年2月にマレーシアを訪問したことをきっかけに現地での事業展開を決めた。彼らが体感し、期待する現地のスピード感に迫る。

株式会社Liberaware 代表取締役 CEO 閔 弘圭 氏
株式会社 Liberaware 代表取締役 CEO 閔 弘圭 氏


わずか20cmの小型ドローンを独自開発

Liberawareが開発した狭小空間専用の点検ドローン“IBIS”

「全長20cmほどの小型ドローンを使い、インフラの点検サービスを事業化しています」とLiberaware代表の閔弘圭氏は話す。小型ドローンによる創業に至った経緯は10年前まで遡る。当時千葉大学に所属していた閔氏は、東日本大震災で発生した原発の建屋内の瓦礫を空から点検調査したいという依頼をきっかけにドローンの開発に着手した。実験での成果は得られたものの、当時のドローンは最小で全長1mあり、建屋内で飛ばすには大きすぎて危険だった。現場運用が難しく実用化には至らなかったが、閔氏はこの経験をもとに、将来の点検調査用ドローンの需要が高まることを予測し、2016年に会社を設立した。狙ったのは、小型の機体を用いた配管内や屋根裏などの狭小空間での点検だ。ただレジャー用途が主流の小型ドローンは点検事業に利用可能な市販部品がほとんどなく、結果として防塵モーターやカメラ、プロペラといった基幹部品を独自設計することになる。例えばモーターは熱がこもりやすいために冷却用の穴を開けるのが一般的だが、防塵性能との一得一失となる。そのため密閉したまま接続部から冷却する仕組みを採用することで、防塵性能が高く高効率なモーターを開発した。防塵モーターを自社開発したドローン企業は世界唯一だ。また、プロペラは熱伝導樹脂で作ることにより、胴体からの熱を逃がす役割も担っている。わずか20cmの中に独自技術が詰め込まれているのだ。数年後には操縦と解析の自動化を視野に入れている。小型ドローンと聞くと飛行時間が短く、頻繁なバッテリー交換の手間がかかると考えてしまうが、屋内での点検であれば8分間の飛行で十分だという。

日本とは異なる東南アジアの点検需要

Liberawareは2021年頃から韓国企業との連携を進め、現地での実証試験を行っていた。東南アジアに目を向けたのは、株主からリバネスの海外支援サービスの紹介を受けたことがきっかけだ。閔氏はそれまで、東南アジアは人件費が安いため、ドローン導入や運用の費用対効果が合わないと考えていた。同時期に開催されたJETRO(日本貿易振興機構)のイベントに招待されたことと、日本との時差が少ないことに後押しされ、自分で体験せずに判断して良いものかと思い、マレーシアとタイへの渡航を決意。結果、「若年層人口は多いが、物価や給与水準の上昇により、賃金の安い肉体労働の現場に人が集まらない」という課題を発見した。日本ではインフラ点検というと、若年層人口の減少による人手不足が主たる課題だが、国の状況が異なっても結果として同じニーズがあったのだ。近年、設備点検にかかるコストは日本に近づいており、財閥系の企業が中心となって、これまで安い人件費に頼っていた仕事をAI・ロボットに代替えする動きが強まっている。新しいインフラ設備が多く、老朽化しているところは少ないが、今のうちに技術開発を進めておけば、将来的な人手不足にも対処できるという考えだ。

マレーシアで体感したスピード感

ドローンで撮影したマレーシアの自治体建物の天井裏

訪問したマレーシアでもうひとつ閔氏が発見したのは、事を進める猛烈な速度と姿勢だ。日本では、一般的に初回面談から社内検討を経て、1〜2ヶ月ほど時間が空いてようやく次の面談、ということも多い。それに対してマレーシアでは、数週のうちに具体的なアクションが起こるという。Liberawareはリバネスのサービスを利用し、2022年11月、2023年1月と2月に連携候補先となるマレーシアの企業を21社訪問し、提案を行った。そのうち2023年1月に訪問したマレーシアの企業のひとつに、インフラ点検を行う政府系企業Putrajaya Corporationがある。同社は、2月に行った2回目の訪問時に、点検対象となる自治体の建物の天井にLiberawareのドローンを入れるための穴を開けて待っていたというのだ。デモンストレーションのためにそこまですることに驚きつつも、その場で点検して撮影画像を3次元化してみせた。「現場の関係者はすぐに買いたいと言ってくれたが、そこまですぐには決まらないだろうと考えていたので、現地での販売方法や価格は考えていなかった」と閔氏。この経験から、短期間で成果を出す手応えを感じ、同社との連携を決めた。秘密情報の取り扱いなど、文化の違いに起因する不安はある。また、英語を話せる人は多いものの、スピーディなコミュニケーションのためには普段の生活で使われるマレー語の必要性も感じている。そのような不安があっても、日々研究開発を重ねながら社会課題の解決を目指すベンチャー企業にとって、急成長を遂げるマレーシアのスピード感は魅力的だろう。Liberawareの小型ドローンがマレーシアで活躍する未来は、すぐそこかもしれない。


Liberawareは2024年1月1日に発生した能登半島地震においても、倒壊した家屋内部の現状調査、家屋床下の現状調査、倒壊リスクのある大型商業施設内部の現状調査を実施した。
小型ドローン「IBIS」を活用し「令和6年能登半島地震」に対する支援を実施しました

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